SAMPLE LOGO

カラフルおじさん

 ぽちゃん、と水の跳ねる音がした。  足元を見ると、小指の先ほどの小さなカエルが、水たまりの上で跳ね回っているところだった。  雨上がりの午後。突然のにわか雨は地上に水たまりという痕跡を残していた。雲一つない青い青い空をそのまま映し出している。  その場所にひとり立っているわたしは、水たまりに革靴を突っ込んだ。カエルが驚いて逃げていく。しばらく続いた水の波紋がおさまったころ、水たまりをそっとのぞくと、そこには見知った顔が映っていた。 「やあ、誰かと思えば木村さん家のお嬢さんじゃないか」 「あ、どうも。またお会いしましたね」  振り向きながらそう言って会釈すると、この人は人のよさそうな笑顔をわたしに向けた。 「せっかく会えて嬉しいのだが、今日はまた雨が降りそうだ。そうなる前に早くお帰り」  言葉は一見強引でも、この人の場合は親切でそう言ってくれているのがよく分かる。どことなく間の抜けた雰囲気が自然とわたしの心を紐解いてしまうらしい。  はい、ありがとうございます、とうっかり言いかけて、わたしは言葉を飲み込んだ。この人に聞きたいことがあったのを思い出した。 「あの、」  そう言いかけたものの、何故か心変わりして、全く別のことを口に出していた。 「今日は、一緒に帰りませんか」  この人は一瞬驚いたような顔をして、それからにこにこと頷いた。空には綺麗な虹が架かっている。  この人の隣を歩きながら、わたしは、聞きたいことはそのうち分かればいいと思った。